ゲームは1日30分

ゲーム実況をしているまなおの感想記録

台湾ホラー「返校 Detention」はただ怖いだけじゃない

1960年代、厳戒令下の台湾を舞台としたホラーアドベンチャーゲーム

暗くじっとりとした怖さと、映画や小説のような考えさせるストーリーに注目。

 

 

こちらはPC版の感想と考察です。

ネタバレになるところは折りたたみにしておきます。

 

 

「返校 Detention」は白色(はくしょく)テロ、二・二八事件以降の恐怖政治時代を題材にしている。日本統治後中国国民党による弾圧で国民は相互監視と密告が強制されていた。

現代の北朝鮮や「魔女狩り」、「ホロコースト」といえばなんとなくでも想像しやいと思う。

 

ここだけを見れば難しいゲームかと思われるかもしれないけれど、思春期の不安定さと歴史をうまく落とし込んでいるなと感じた。 当時の宗教や風習も組み込まれていて少し台湾を知ることができる。「一膳飯」は日本でも食事のマナーとして立て箸をしてはいけないとされているよね。

 

 

返校 Detention

 

はじまりは一人の男性が授業中居眠りしたところから。

(実は私はウェイくんが主人公だと当初思っていた。ゲーム紹介記事か何かでそのように書かれていたから。1回目の実況動画でウェイくんが学校から脱出すると言ってしまっていて見てくれた方に申し訳ない)

気付けば教室には誰もいない、季節外れの台風がきている。

校内を移動し講堂の舞台上で眠る女性と出会う。彼女はレイちゃん。上級生。二人で帰宅しようとするが唯一の道が通れなくなっており、仕方なく学校に戻ることに。

見慣れたはずの校内はいつの間にか亜空間へと変わっていた。

 

 

返校 Detention

 

探索、謎解き、幽霊をかわし、落ちている読み物はヒントやストーリー補完できるもの。エンディングは2種類あるがどちらも切なく悲しい。ぜひ両方見ていただきたい。

難易度はやさしめだと思う。幽霊に対して攻撃手段はなくシンプルな方法でかわすことになる。やられてしまってもヒントをくれるしやり直しも簡単(こちらの演出もゲームととても合ったものになっている)

謎解きは一部難しく感じるところがあるかもしれない。私は"聞く"謎解きに苦労したよ。

何かが一瞬画面に出て消える演出が多めなのでホラーが苦手な方はたくさんのびっくりに気をつけてね。

 

返校 Detention

 

 

「紙飛行機が私の夢を運んでくれて… 次に目覚めたら知らない国にいて…

見知らぬ町で新しい人生を始められたら… そうだったらいいのに。」

ゲーム内より

 

 

家庭不和、友人関係、恋愛。

思春期はとても輝いているけれど儚くそして脆い。その不安定さと時代背景が見事組み合わさっているのがこのゲームの一番のポイントじゃないかな。

小さな子供のうちは親が世界のすべて。学校に通うようになると主軸がそちらに移る。それじゃあ家も学校もうまくいかないなら逃げ道は?

常に言動を監視されている息苦しく緊張した生活の中でついに糸が切れてしまった。

 

映画を見ているような、小説を読んだような、とにかくいい意味で疲れた作品でした。

私はこのゲームをホラーではなくサスペンスだと思っている。まぁサスペンスホラーでいいわけなんだけど、ホラーが苦手ではないのでそちらの印象が薄くなっている。

 

ここからはネタバレです。長いです。

 

血が滴る、たくさんの目玉の出現など"ホラー"な要素はあるんだけど、息を止めることで回避する幽霊の存在意義に疑問を感じてしまった。ほとんど出てこないんだから。もう少し出番が多くても良かったのかも。

 

ただ物語の構成を考えると、レイちゃんと連動しているのかなということに思い至った。つまりおかしな世界に戸惑っていたが、追体験をすることで自分が何をしたのか自覚をしあの世からこの世になった。

幽霊が出てきている間は死んだことがわからない、密告したことを思い出したから幽霊が出てこない(異世界などではない)そんな風にもとれるなぁと。考えすぎ?

だんだん移動が面倒だったので出てこなくて助かってましたが。

 

レイちゃんとチャン先生の関係を知ったイン先生の警告で二人は終わりを向かえる。レイちゃんを守るために関係を絶ったんだろうけど、そんなことを知らないレイちゃんは勘違いをしてしまったんだろうな。どちらも短絡的としかいえない。

引きずり込んだチャン先生はきちんと話すべきだしレイちゃんも矛先をイン先生に向けるべきではなかった。

 

白鹿のペンダントはチャン先生と大通りに行ったときに貰った物のようです。銃を撃ったときから映画を見終わる間は持ち物にないよう。そんな大事なものなのでウェイくんと出会ったときに「あれがないと帰れない」と言っていたのでしょうね。

少しこのペンダントを掘り下げると、見た目は「鹿の形をした翡翠が、赤い紐で結ばれている」もの。まず白い鹿というのは日本では神の遣いと考えられている。良い方向へ導いてくれる吉兆の証。台湾でも同じようで、台湾最大の湖日月潭には白鹿の伝説があるそうです。

キリスト教においても鹿は悪いことを払いのけてくれる神聖な生き物であると信じられている。

次に翡翠。この石は古代より護符や魔除けとして使われている。日本では勾玉が一般的じゃないかな。そして、不老不死や五徳を高めるとされているよ。

赤い紐は中国でも"運命の赤い糸"恋愛の意味があるみたいなので台湾も同じかな。

レイちゃんにとってチャン先生は特別だったんだなというのがわかる。

 

さて、イン先生を撃つ場面があるんだけどあれは妄想というか願望というか葛藤かなと思っている。密告をしたことで多くの犠牲を出した自責の念と、だけどもそれを引き起こしたイン先生への憎悪。先生からあなたがあんなことをしなければと責められているそれはレイちゃん自身もわかっている。

 

ところで鏡が多く描かれているが「鏡の向こう側」と「こちら側」を表しているのは間違いないんじゃないかな。そして「目」の意味もあるのでは。

ギリシャ神話によると、ナルシストの語源となったナルキッソスの体は死後水仙に変わった(死んだ場所に咲いた)そうなんだ。

さりげなく廊下のプランターに咲いている水仙。チャン先生はまるで白い水仙のようだとレイちゃんを褒めている。水仙の学名はナルシサス。ナルキッソスからきている。花言葉はいろいろあるけれど「自己愛」「うぬぼれ」白い水仙は「神秘」「尊重」。春の訪れとともに咲くので希望の象徴になっている。

チャン先生にとってもレイちゃんは特別だったのだろうな…(関係を絶つならもっとちゃんとしなさい!)

 

銃を撃つ場面に戻るが、イン先生の向こうにある鏡には袋を被る男性らしき姿が映っている。チャン先生だろう。レイちゃんがチャン先生を殺してしまったことを暗に示していると思う。

 

過ちが大きな罪になり耐え切れず命を絶ってしまう。

バッドエンドでは大勢に拍手で迎えられる。トゥルーエンドはウェイくんが出てくる。レイちゃんがどのように亡くなったのかは屋上からの飛び降りかな。バッドエンドの通りなんだろうか。そうするとウェイくんとの出会い方につながるなぁ。

 

彼女の魂は解き放たれたのかそれともまだ彷徨っているのか。

 

 

ほとんどホラーゲームを遊んでこなかった私だけど「返校 Detention」は即お気に入り登録したんだ。したものの当初は日本語に対応していなかったので待ち続けていた。

待っていて良かった。詩的な表現が多用されていてそれがとても自然な日本語になっている。翻訳してくださった方どうもありがとう。 

話がしっかりしている場合はやはり日本語で遊びたい。

 

こちらは私が遊んだ動画です

[END]冥府をさまよう返校Detention - YouTube

 

「返校 Detention」はPC、Nintendo Switchで日本語対応配信中。

また、外伝小説が台湾で発売されており、映画化が決まっている。